マグデブルク市(1)地名の語源

LexMA VI, Sp.71-.
 旧東ドイツ地域、エルベ河畔にある都市。
スラヴ人地域とドイツ人地域を結ぶ通商地として、フランク時代に成立。
史料上の言及は805年、カール大帝の「ディーデンホーフェンのカピトゥラール」中に《Magadeburg》としてあらわれる。→(語源についての解説なし)

牧英夫『世界地名の語源』自由国民社、1980年。
参照元はV.A.Nikonow, Kraktii Toponomitcheskii Slovar' . Moscow1966.
 語源については不明とし、二つの仮説を紹介している。
1.女性の個人名「マグデ」と都市「ブルク」を合わせたものだとする説。
2.女性をあらわす一般名詞「マガトハ(古高ドイツ語)」と都市「ブルク」を合わせたものだとする説。
 いずれの説も他方を論破する証拠に欠けている様子。

未チェック文献:
Berger, Dieter:Geographische Namen in Deutschland : Herkunft und Bedeutung der Namen von Landern, Stadten, Bergen und Gewassern. Mannheim : Dudenverlag, c1993.

参考:マグデブルク市

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参考図書案その1

*サイト検索でこの頁にたどりつかれた方へ。この記事は2004.05.24.に作成されましたが、新着記事として一般に公開する意味の薄いものと思いますので過去記事扱いにしてあります。
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下記データはすべてドイツ語書籍、リンク先はAmazon.deです。
選書基準は
1)Amazon.deで購入できる(しやすい)新しい書籍
2)学部生および修士向けの基本的な辞書・ハンドブック
学内にすでに所蔵されている場合、★マークをつけました。
専修室の蔵書は把握していないので、お手数ですが確認を願います。

1.手引き書
Goetz, Hans-Werner: Proseminar Geschichte, Mittelalter. 2.Aufl., Stuttgart 2000
2.導入のための史料集
Deutsche Geschichte in Quellen und Darstellung, 11 Bde.(レクラム文庫)
3.歴史事典
Lexikon des Mittelalters, 9 Bde.
 *Amazonのデータはペーパーバック版ですが、専修室用にはハードカバー版のほうが良いかも。

4.伝記
ドイツ国王たちについて:
Schneidmüller, Bernd/Weinfurter, Stefan: Die deutschen Herrscher des Mittelalters. München 2003.
ドイツ司教たちについて:
Gatz, Erwin: Die Bischöfe des Heiligen Römischen Reiches, 1198 bis 1448. Berlin 1990-.
Gatz, Erwin: Die Bischöfe des Heiligen Römischen Reiches, 1448 bis 1648. Berlin 1990-.

5.歴史補助学関連
史料学:
Beck,Friedrich/Henning, Eckart(Hrsg.): Die archivalischen Quellen. 4. Aufl., Köln 2004.
Löffler,Karl/Milde,Wolfgang: Einführung in die Handschriftenkunde.Stuttgart 1997.

6.その他(個人的要望です…)
ドイツ域内の宮廷と宮廷都市に関するハンドブック:
Paravicini,Werner...et./Residenzenforschung, Bd.15/1 : Höfe und Residenzen im spätmittelalterlichen Reich, 2 Teilbde.,Ostfildern 2003.

ドイツ語によるヨーロッパ史研究動向・文献紹介のシリーズOldenbourg Grundriss der Geschichteの中世盛期~後期の巻。学内にシリーズ蔵書がありますが、この巻は所蔵なしです。専修室配架の必要はないと思いますが、併記しておきます:
Dirlmeier,Ulf...et.: Europa im Spätmittelalter 1215 - 1378. München 2003.(Oldenbourg Grundriss der Geschichte 8)


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Siegen : eine Stadt

夏休み最後の週を利用して、ちょこちょこと旅行に行ってました。
どこの街の歴史も面白く、一度行ったらまた行きたくなるような魅力を持っています。
もっとも大半は田舎町で、「あえて行く」かどうかは人それぞれという気もします。
そこでそのような街の歴史情報をメモしておこうかと思います。

 まずはジーゲンSiegen。(→街のホームページ
 自己紹介によると、南ウェストファーレンの経済中心地にして大学町とのこと。
たしかにケルンから電車で訪れたなかでは大きな町だったと思います。ジーゲン大学は理工学関係のほうが有名らしいですが、総合大学ですので歴史学関係の講座も設置されているようです。

 歴史的には、おそらく11世紀後半にはすでに街(=歴史用語としての中世「都市」)としての機能を果たしていたと考えられます。現在の理解によると、はじめて「都市」と呼んだ証書があらわれたのは1224年。「新たに設置された都市」という表現から、いわゆる法的な「都市」となったのはこの直前ではないかとおもわれます。この時点ではナッサウ伯とケルン大司教がそれぞれ権利の半分を分け合っていたようです。そして15世紀後半以降、ナッサウ伯が単独の都市支配者となります。 

 このナッサウ家(正確にはその後継家門であるうちのオラニエ=ナッサウ家)がオランダ王家の祖先となったことはよく知られています。(家系図は「系図の迷宮」さんへリンクしてます)
 当時の貴族家門は分家や婚姻を繰り返し、大規模な親族集団として政治的な発言力やときには軍事力をも行使したのです。

 ジーゲンの山の上にある旧市街地「上町Obere Stadt」の最上部にある館「上の館Ober Schloss」はこのナッサウ伯の居館で、現在はジーガーラント博物館となっています。所蔵物のうちのみどころは、オラニエ=ナッサウ家のひとびとの肖像画群と、ルーベンスのコレクションのようでした。またこの博物館に隣接して地方史関係の充実した図書館もあるようです(今回は覗きませんでした)。

Siegerlandmuseum
im Oberen Schloss
Burgstraße • 57072 Siegen
Postfach 100352 • 57003 Siegen

Öffnungszeiten:
dienstags bis sonntags 10.00 – 17.00 Uhr
Sonderöffnungszeiten an Feiertagen.

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momparschaft

momparとmomparschaft。
聞きなれない言葉、聴きなれない単語でした。
1300年のコブレンツ都市参事会成立文書(Bär, Urkunden und Akten, 1898, S.28f.)に各一箇所、くわえてK.LamprechtのDWLにも確か一箇所出てくるこの表現。独和辞典にものってなくて、なんだかはがゆい思いでした。
 文脈を見る限り、「長老」とか「有力者」といった意味に読み取れるということ、あと文書の中での位置づけにそれほど概念上の重要性が見えないことから今までほうってあったんですが(2月から)、ふとDeutschen RechtswörterbuchをWEB上で調べたら、でてました

mompar→mombarで音が変化してるわけですね。意味は「集団における代表」と、比較的ニュートラルな意味でした。現代法では(特に裁判などにおける)法人の代理人・代表者を指すようです。
 こんなささいな、しかもわかってみるとそれほど特殊でない意味の言葉でもわかるとうれしいので、エントリーとして残しておきます。

 ただこのオンライン事典、はっきりいって使いにくいんですよね。まあ些細な問題ではありますが。

 冷静になって見直してみると、mompar=メンバー、ってことですね。現代ドイツ語にはmombarという言葉は一般的な語としては存在しないはず…。

 (8/28追記)
 上記のような内容をエントリーしておいたところ、私の優秀な副官から情報を頂戴しました。オランダ語でもmember系統の単語は基本的には存在しないとのこと。memberのドイツ語であるMitgliedと同系統のlidという単語が使われているとのことでした。そして副官の示唆にしたがって調べて見たところ、そもそもmemberという英語はラテン語のmembrumから来ている様子。フランス語・スペイン語・イタリア語はみなこの系統の単語でした。ドイツ語・オランダ語がむしろ少数派なのか…。
 というわけで、1300年前後のドイツの都市の史料の中にあらわれたこのmomparschaftという語、なかなかその語源以上に面白そうな背景を隠していそうです。
 大まかな形で言うと、現代ドイツ語の「mombar」の早期の表現であるこれは、ドイツ都市の法体系におけるローマ法の影響、概念借用、といった要素を秘めていると思われるのです。
 ゲルマン法とローマ法の対決、という大きな一つの流れがドイツ19世紀法学、あるいは法制史の中には存在していました。これは中世における、一つの小さな「のぞき穴」なのかもしれません。

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司教と中世都市

*ドイツ語論文の概要読解・感想などです。内容は適宜追加してゆきます。

Ennen, Edith
Bischof und mittelalterliche Stadt. Die Entwicklung in Oberitalien, Frankreich und Deutschland.
in: Ders., Gesammelte Abhandlungen zur europäischen Städtewesen und zur rheinischen Geschichte II. hrsg.v.Dietrich Höroldt u. Franz Irsigler, Bonn 1987. S. 40-52.

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中世前期における都市ケルン

*論文の読解・感想などです。内容はあとから付加的に練り直してゆきます。


向田伸一・池谷文夫
「中世前期における都市ケルン」
茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学、芸術)44号、1995年。1-17頁

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